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2024.08.05

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9人の人生 / パク·ソンフン



演劇『パンヤ(原題)』でパク·ソンフンは小銃になって9人の人生を生きる。





コート、パンツ、シャツはすべてジルサンダー(Jil Sander)


 





 

レザーコートはグッチ(Gucci)

 






ジャケットとパンツはディオール(Dior)シューズはスタイリストのコレクション

 



演劇『パンヤ(原題)』に登場する銃を探していたのですが、ご自身で持っていたのですね? 『パンヤ』が「99式小銃」なので演劇で最も重要な小道具ですよね。文学でいう「擬人化」の標本のような作品ですね。
練習もして、記念としても欲しくて一番似たようなものを買いました。『パンヤ』は黄旗2599年(1939年)に製作された銃です。
実は同じものだと思って買ったのですが、違いました(笑)



7年ぶりに演劇舞台に戻ってきましたね。なぜこの作品なのでしょうか?
今この時期なら時間があると思いました。
キム·テヒョン演出家に連絡したら「ちょうど『パンヤ』をやっているから君とよく合いそうだ」と台本をくれました。 3時間の公演ですが、1時間で読み終えました。
物事を擬人化するというのがとても興味深く痛切な韓国の近現代史に目を通すこと、小市民の哀歓を扱うこともとても良かったです。 すごく賢い台本です。 私がやらせてくれとせがみました(笑)


 

演出家、作家に対する信頼も重要ですよね?
キムテヒョン演出家とは11年前に『ヒストリーボーイズ』を共にし『模範生たち』『トゥギョルハンジャン』という公演でも共にしたので、彼とは親しい間柄です。
キム·ウンソン作家さんとは初めてでしたが『月の国の連続ドラマ』『木蘭お姉さん』が好きだったんですよ。
パンヤ』も再演ですが初演当時、良い賞もたくさんもらい僕のファンの方々が「素晴らしい作品だ」と言っていました。


ずっと動向を探っていたのですか? どのような部分でソンフンさんとよく合うと思いますか?
立派な作品が出たという話を聞くと興味がわきます。
まず、私が長銃みたいじゃないですか。やせ細っていて長いし (笑)



 




ブラウスとインナートップ、パンツはすべてアーミー(Ami)

 






シャツとネクタイ、パンツはいずれもドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)


 




「誰だ!お前は俺を知っているのか?」これがパンヤの最初のセリフですよね。
パンヤは77歳で銃は古いが老けないから。 パンヤとしては長い歳月の間、苦難と苦痛を経験した彼は少し休もうとしたところ「お前が何で急に現れて、俺を苦しめるんだ」という苦しい気持ちをこらえ吐き出す最初の一言です。



そして77年間で主人公が9回も変わる人生を見せてくれます。
仕方なく戦争の中で殺戮をする苦しいパンヤの心情を、そのまま伝えようと頑張っています。
その一つ一つの主人公ごとに、どこまで感情を移入して共感しなければならないのかについての悩みが多かったです。


限られた時間の中で9人を演じるわけですが、どうでしたか?
それで切り替えも多くてスピード感も速いです。泣いてもすぐに切り替え"次の主人公は!"となります。
一瞬一瞬を完璧にしようと、とても努力しています。毎瞬間緊張を緩めてはいけないし、その瞬間集中力が必要です。
また、他の演劇では想像できないほどキュー(合図)が多いです。 音響300個、照明700個、約1000個のキューがあるそうです。
ほとんど歌のないミュージカルで 照明も音響効果も多い上、軍歌と振り付けも入ります。 数多くの演出の力量が集中しているんですよ。それで見る楽しみがある作品です。



演出力がある作品ですね。 俳優にとってはどうですか?
劇を効果的に伝えられますよね。 反面、その数多くのキューを全て合わせることに対する困難もあります。
いろんな俳優さんたち、また音響と照明を担当したオペレーターさんと細かく全部合わなければならないので観客の方々は気付かない小さなミスも所々あります。



しばらくメディアの演技に集中しましたよね。 演劇舞台が懐かしかったですか?
いつも演劇舞台を気にかけこの作品をやってみようかと悩み、議論もしました。
時期が合わなかったこともあり放送や映画などメディア演技に集中する時だと考えたりもしました。
今回は作品と時期がぴったりでした。



7年ぶりに戻ってみてどうですか?
私があまりにもメディア演技に慣れてしまっていたんですよね(笑)それで実力不足で気が済まないんです。
公演は始まりましたが練習を重ねながら自分自身がもっと満足できるレベルにいけるよう、努力している最中だと思います。
ほぼ毎回「初公演」という気持ちで取り組んでいます。 久しぶりにステージに立つことが出来てとても嬉しいです。


「初公演をする気持ち」は どんな気持ちでしたか?
毎回初公演はいつも震えました。 実は初公演にくることはあまりお勧めしないです。
公演がやっている間の中盤か後半に来ることをおすすめしたいです、 ぜひ今お越しください。



人生初公演の記憶は何でしたか? 今と同じ気持ちですか?
大学路で最初にあげた公演は『ミンククジラは消化不良だ』でした。
けれど学校のお祭りで1年生の時舞台に立ったのが演劇のはじまりです。 その記憶が一番強烈に残っています。
チャン·ジン監督が書いて演出した作品『タクシードリバル』を私たちだけでやってみたのです。


その後どんなことが起こりましたか?
「ソウル演劇祭」でチェ·ミンシク先輩が主演したその役を私が引き受けたのです。
あまりにも才能あふれる同期が多いのに、私が主人公をするということに疑問に思う人もいて私も負担でした。 最初のセリフの時は笑い声も聞こえるようでしたが、劇が中盤に駆け上がりだんだん集中してきて最後のカーテンコールの時に感嘆しながら心から拍手をしてくれる時、その達成感と喜びを忘れることができず今までも舞台に上がっているようです。


それが公演芸術の語る観客との呼吸であり、メディアの演技では経験できない地点のようですね。
そうです。「いま観客が集中して見ているんだ」というのが、直接感じられます。
紀元前から始まった演劇が今OTTの時代にも活発になれるのはそれだけ見る価値があるからだと思います。
公演の存在を知り、その公演を見ようと決心してチケットを手に入れ、時間を作って劇場に来るということは、実はすごい努力と莫大な関心と愛情があってこそ可能なことなので客席を埋めてくれたすべての方に本当に感謝する気持ちが自然に生まれます。


『パンヤ』の公演会場の代わりに、すぐ隣の小劇場を借りて画報を撮影しましたよね。
演劇の原点のような場所ですね。 劇中にも恵化駅ロータリーが登場します。 思い出が多いですか?

ロータリーの横にある「ヤンピョンスープ」も登場しましたが、残念ながらそこは先日歴史の中に消えました。 大学路には思い出が本当に多いです。 路地や居酒、ご飯屋や劇場ごとにたくさんの思い出が詰まっています。 そこでお酒を飲みましたがあの店は「カルグクス」が大好きでした。


やっぱり美食家らしいところがありますね。 話が出たついでに行きつけの店をおすすめするとしたら?
みんな「君は食べ物の話をする時、本当に楽しそう」だって。 ロータリーを少し過ぎてからある「ミョンリュンソンカルグクス」がおすすめです。
午前11時から午後1時までなので少し早く行かないと食べられません。


演劇が与える最大の喜びと楽しさは何だと思いますか?
今、この公演はこの時間にだけ存在しこの場の人同士だけが共有できるということ。
同じ公演を同じ人が繰り返しても毎日違うのが演劇なんですが、また配役も変わって毎回本当に違う面白さが生まれるんですよ。その躍動感を一緒に共有することができます。


『パンヤ』を準備する過程で新しく感じた点はありますか?
7年間で様々な公演文化が変わりました。 以前は当たり前だった「プレスコール」はもうあまりしないらしく初めて聞く「グレイゴン」、公演が終わって一つのシーンを見せる「スペシャルカーテンコール」など、私も初めて知ることがたくさんありました。
7年間活発に活動している後輩もいてもちろん、依然として旺盛に活動する先輩たちもいらっしゃいますが、私は何だか大学路がもう一世代が過ぎたという感じもしました。 公演のテンポももう少し速くなったようです。



ユーチューブとショートフォームの影響でしょうか?
そういう影響も受けるんじゃないでしょうか? 私たちの公演もテンポが速いんですよ。 そういうことを体感しています。


その演劇文化でまた大きな足跡を残したじゃないですか。 「ロックウッド席」または「パク·ソンフン席」と。 それはどのように作られたのですか?
模範生たち』の時、俳優たちがチケッティングに参加して観客の方々にプレゼントするイベントがありました。 チケッティングがどれだけ大変なのか俳優たちが体感し、プレゼントも差し上げようということでしたが席を選択するといつも「すでにこの席は確保済み」と出てくるのです。
そこで一番後ろの端の席を選んで「チケッティング成功した!」と言ったら「それはプレゼントじゃなくて罰ゲームだよ…(笑)」
と実際にプレゼントをもらった方がレビューを残してくれました。それでその席が「パク·ソンフン席」と呼ばれるようになってからもう10年以上経ちました。
ここまでその言葉使われるとは本当に想像もしていませんでした。

 

このように公演界に大きな足跡を一つ残していきましたね。
ドラマや映画を撮る時も「先輩、パク·ソンフン席って一体何ですか?」と聞かれます。 嬉しいですよね。 「虎は皮を残し、人は名を残す」大学路に私の名前3文字を残したから。 77歳になるまで維持しなければならない…


77歳の俳優パク·ソンフンを想像したことはありますか?
シング、イ·スンジェ先生のようにな大スターの大先輩たちはメディア活動も着実にしながら舞台での仕事も怠りません。
すごいですよね。 私は早くも体力の浮き沈みを感じていますが、それを最後まで持っていかれる姿に尊敬しています。
いつもあの方々のように私もできたらいいなという思いを抱きながら、そういう姿を想像しています。


次はどこで会えますか?
年末には『イカゲーム2』が披露されることになり、映画『熱帯夜』はおそらく来年になるのではないかと思います。
しばらくは舞台でお待ちしております。 明日も公演があります。