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2024.03.29

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パク・ソンフンが願うこと



Q. 日が暮れて寒くなってきましたね。ヒーターつけますか?
A. つけていただけたらありがたいです。春が来たかなと思ったのに。

Q. インタビューが公開される頃には多分暖かくなっていると思います。
A. これは4月号だから(よく考えて)、公開日はいつ頃ですか?

Q. 3月末です。tvNドラマ「涙の女王」が放送中ですね。
A. そうですね。(放送が)もうすぐですね。

Q. ’ウォール街のアナリスト出身M&A専門家’という’ユン・ウンソン’の人物紹介を読みました。なんだか冷たくて鋭い感じがしました。
A. ’ユン・ウンソン’は見た目は非常に明敏で紳士だが、野望を隠し持っている男です。作中、倦怠期を迎えた夫婦’ホン・ヘイン’と’ペク・ヒョヌ’の間で、絶えず緊張感を与える人物です。

Q. 今回も新しいキャラクターを演じられているなと思いました。
A. これまで演じたことのない役なので、期待していただいてもいいと思います。

Q. Netflixドラマ「イカゲーム」シーズン2から未公開作品まで、公開を控えている次回作が続いています。作品を選ぶ基準はありますか?
A. 最も重要なことは、どれだけ面白いと感じるかどうかです。作品がくれる面白さ、キャラクターの魅力が見せてくれる面白さ。元々僕の性格と似ているキャラクターよりは、相反するキャラクターを演技する時に挑戦意識がさらに湧いてきます。それだけ作り上げないといけない幅が広くなるから。

Q. 現実ではどのような性格なのか気になりますね。
A. 基本的には内向的だと思います。僕のMBTIはISFJです。だからと言っておとなしいだけではありません。日常で作品の影響を大きく受けたりもします。明るいキャラクターを演じたら明るくなって、暗い役だと現実でも暗くなるように。こういう人だ、と断定するのは難しいですね。

Q. ISFJが最も定義付けが難しいタイプって言うじゃないですか。
A. 一人でいれば誰かに会いたくなって、誰かと会えば急に一人になりたくなるんです(笑)

Q. 性格と遠いキャラクターを演技する時、挑戦意識が湧いてくると言っていましたが、例えばどのような作品がありますか?
A. Netflixドラマ「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」の’チョン・ジェジュン’をはじめ、作品の悪役を演じる時にそういう風に感じます。結果に対する良いフィードバックも、良い人の役を演じる時より悪役を演じた時のほうがたくさんいただけるような気がします。

Q. やはり作品の中で悪人が与えるインパクトがありますからね。でもKBS「たった一人の私の味方」で優しい役である’チャン・ゴレ’を印象深く覚えてる人も多かったですよ。作中で立体的な叙事を備えたキャラクターであるだけに、演技が容易ではなかったと思います。
A. そうですね。実は「たった一人の私の味方」は家族ドラマでもあり、キャラクター自体が優しい役なので中盤までは撮影するうえで難しいことはありませんでした。その後、肝硬変末期という診断を受け妻と母の関係を解いていかなければならないシーンから(感情を消化させることが)難しかったです。未熟な点はありましたが、常に最善を尽くして演じた作品です。

Q. 「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」の話が出ましたが、チョン・ジェジュンのインパクトがとても強かったじゃないですか。このキャラクターに初めて接した時どうでしたか。
A. チョン・ジェジュンの場合、台本に’ただのやばい奴’と書いてありました(笑) それほど思いっきり自分勝手に生きている、本当にどうしようもない人物なんです。



Q. これまでも様々な悪役を演じられましたよね。チョン・ジェジュンを演じた時と、KBS2ドラマ「ジャスティス-復讐という名の正義-」、tvNドラマ「サイコパス ダイアリー」で悪役を演じた時で異なる点は何かありましたか?
A. 同じ悪役でも性格的な部分で大きな違いがありました。「ジャスティス-復讐という名の正義-」’タク・スホ’がソシオパス、「サイコパス ダイアリー」’ソ・イヌ’がサイコパスという定型化された悪人ならば「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」のチョン・ジェジュンは’自由奔放な悪人’と表すことができると思います。俳優の立場で、それだけ自由であれこれ表現できる部分がより開かれているといいますか。実の娘’ハ・イェソル’のことを思う姿は本物なので、他の役より多様な面がある人物でもあります。

Q. 娘が盗撮被害者という事実を知った直後、車に乗って走っていく場面が印象に残っています。前の車に悪口を浴びせながらクラクションを鳴らしていましたね。
A. ありがとうございます(笑) 実は作品で唯一僕のアドリブを入れたシーンです。撮影する時、セリフは1~2行だけあって、監督から追加でアドリブを入れてほしいと言われていました。

Q. 特に大声で叫んだり攻撃的なセリフが多い人物でしたね。
A. 演劇の舞台に立っていた経験が役に立ったと思います。舞台の上では、そのシーンのために感情を注ぎ込み、観客を説得しますから。そのような感情線を失わないよう練習します。

Q. あ、家でですか?
A. いえ、主に運転している時です。家では騒音問題が発生する可能性がありますから。そうやって練習して実践でセリフを叫んでみると解消される部分もあります。年を重ねるごとに怒ることが次第に減るじゃないですか。腹が立っても社会生活をしていると我慢しなければならないことが多くなるし。こんなシーンが無ければ、いつあんなに思いっきり誰かに叫ぶことがあるでしょうか。現実でそうしたら人格に問題がある人でしょう(笑)

Q. チョン・ジェジュンのセリフを見ると、キム・ウンスク作家特有のユーモラスさがにじみ出ているじゃないですか。例えば”どうやって来られましたか?”という質問に”車で来ました”と答えるセリフのように。そんな部分でも今までにはなかった悪役の種類です
A. そうですね。そんな’言葉遊び’のおかげでさらに特別なキャラクターであり、作品だと思います。

Q. 作品を終えて大ヒットするかもという予感はありましたか?
A. ある程度良い予感はしていました。キム・ウンスク作家がとても立派に書いてくださいましたが、演出家と作家の息もぴったりでした。一緒に演技した俳優一人一人がキャラクターとぴったりでしたし。ですが期待よりもっと大ヒットしました。

Q. 俳優生活で転換点になる作品になるのではないかと思います。
A. 僕の顔を大衆に知らせた作品だけに大切です。街を歩いていたら前より多くの方が気づいてくださいます。

Q. 役のインパクトがとても強かったので話しかけるのが怖いかと思うのですが。
A. そうなんです!以前「たった一人の私の味方」がヒットした時は一緒に写真を撮ってほしいと言われることもあったのですが、最近は少し遠くから気づいてくれます(笑) それでも挨拶してくださるだけでありがたいです。



Q. 「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」以降に変化した心構えがあるとしたら?
A. やっと新しいチャプターに入ったという感じがします。 顔を知られた後の行動がもっと重要だと信じています。そう考えてみると、また他の視点に立ったことになるのでしょう。良い俳優になりたければこの世界でもう少し集中しないといけないと思います。顔が少し知られたからと緊張の紐を緩めてはいけません。

Q. 新人時代にインタビューで’多作’を最優先目標にしていました。その目標は今も変わっていないのか気になります。何か追加されたとか。
A. 多くの作品をしたい気持ちは実は今も変わっていないと思います。一つ一つの作品を作っていきながら、少しずつ成長が感じられます。元々仕事中毒でもあります。もう一つ目標があるとしたら、単純に多くの作品に出演するのではなく、常に信頼感を与えられる俳優になることです。

Q. 信頼感を与える俳優とは、例えばどういう俳優がいますか?
A. イ・ビョンホン先輩です。先輩がある作品に出演するという知らせを聞くと、私たちは漠然と期待感を持って作品を見ることになります。そんな部分で常に期待値を更新する先輩です。

Q. フィルモグラフィーを見ると、デビュー以来今までずっと走り続けてきたんですね。役のために自分自身を追い込むタイプなのかも気になります。
A. そういうタイプです。作品を通して、俳優として人としての器を少しずつ広げられていると信じています。前から僕が理解できないことや恐れていることに作品で出会い、ぶつかったり壊したりしたいんだと思います。性的マイノリティを扱った演劇『PRIDE』に挑戦する時もそうでした。幼い頃からキリスト教の家庭で育ったので性的マイノリティに対する偏見がありました。キャラクターを通して偏見を破り、むしろ彼らを理解してみたかったんです。映画『コンジアム』の時もそうでした。怖がりなのでホラー系は一切見れないのですが、僕がやったことのないことなので挑戦してみる価値があると思いました。振り返ってみればそんな一連の過程が僕をもう一段階成長させてくれたと信じています。

Q. 自らを克服しようとする気持ちがここまで導いたんですね。
A. そうですね。実は演技を本格的に始めた時もそういう心構えから始まったのだと思います。高校3年生の時に進路に対して漠然と悩んで演技の学校に通ったのですが、僕が一番演技が下手でした。緊張もたくさんしました。不思議とそんな自分自身を克服してみたいと思ったんです。その時から演技という価値が僕にとって最も大きな課題になりました。

Q. 演技者になろうと心に決めた時、家族の反応はどうでしたか。
A. みんな驚いていました(笑) 当時は僕があまりにも消極的な性格だったからです。それでも父は「お前が何をしようと応援するが、一回始めたら最後までやりきらないといけない」と言ってくれました。信じてくれたんです。(父が)若い頃、夢を諦めて他の道を選んだのですが、夢に対する思いと未練が長く残っていたのだと思います。大学路で安定しつつあった30代前半まで、父のその言葉が不安な気持ちをしっかり支えてくれました。



Q. 不安が消えた時期に対してもう少し詳しく説明していただけますか?
A. そんなに大したことはありません。オーディションを受けなくても演劇をし続けることができる俳優になった時、ようやくその不安感が無くなりました。アルバイトをこれ以上しなくてもただ舞台で演技を見せることができるんだと思いました。もちろんお金は相変わらず足らなかったです。同僚と煮たり焼いたりしながら僕たちの公演を見せることができるということ、その時はそれだけでも十分でした。

Q. 『屋根部屋のネコ』『ALMOST MAINE』など、様々な演劇舞台で演技を披露しています。演劇舞台で初めて喜びを感じた瞬間を覚えていますか?
A. もちろんです。大学1年生の1学期、初めてワークショップ演劇オーディションを受けたのですが、急に主人公になったんです。皆が怪訝そうにしました。
当時ずば抜けた人が多かったんです。自分でもこの学年で一番演技が下手だと思っていましたし。初めて舞台の上でセリフを始めたのですが、客席からあざ笑う声が聞こえてきたのを思い出しました。ですが、話が進むにつれて観客が僕のセリフに集中するのを舞台の上の空気で感じることができました。さらに圧巻したのはカーテンコールでした。僕が最後のセリフを終えカーテンコールに近づいた瞬間、観客の拍手の音と共にものすごい快感を感じました。あの時のあの感覚が忘れられず演劇の舞台に立ち続けているのだと思います。



Q. 俳優にとって演劇舞台は故郷のような場所という話があるじゃないですか。演劇舞台に復帰したいと思う時はないですか?
A. ’故郷’という言葉はぴったりだと思います。礎石と基盤を固めた場所なので。舞台に立たなくなってもう7年も経っていました。幸いなことに今年6月には『パンヤ(原題)』という演劇で久しぶりに皆さんにご挨拶できると思います。昨年の公演の時に関心を持って見守っていたのですが、良い機会でご一緒することになりました。

Q. 7年ぶりの舞台なだけに感じる思いは格別でしょうね。
A. 何より昔のことをたくさん思い出しそうです。毎回公演を始める時に聞いていた観客のひそひそと話す声、舞台の後ろに設置されている照明までちらつきます。公演の始まりに「今日も頑張ろう」と誓った瞬間もです。長い空白期間があっただけに、舞台で感覚を取り戻すためにもう一度練習しなければなりません。

Q. 余裕ができたら少し休んでも良いと思うのですが、仕事中毒ですね。
A. 僕という人自体がそうなんです(笑) 特に趣味もないし、休んだら少し不安を感じるタイプです。仕事をするのがとても好きだし。演技のない人生を想像することすらできないくらい、人生に占める比重がものすごく大きいんです。最近はまっていることが一つあるのですが、これが趣味といえるのかわからないですね。

Q. それは何ですか?私が判断してみましょう。
A. 最近'火を見ながらボーっとする'映像にはまっています。実際に火をつけるのはあまり好きではないのですが、映像でも火を見るとリラックスします。火を見ながらボーっとする映像を流しておいて家で一人ワインを飲むだけでも、一人の時間を楽しむことができます。

Q. ’デジタル焚き火’ですね。俳優は毎回作品を通して試験台に上がるしかないですよね。そんな部分に対してプレッシャーを感じることはないですか?
A. うーん、今より新人の時はすごく感じました。作品に出演する度に放送をモニタリングしたし、撮影現場に行く前には携帯でずっと僕の姿を撮影しました。携帯で撮影して修正し、また撮影して、何回もその過程を繰り返しました。結局そのような圧迫感はどこでも現れるしかない感情であり、数えきれないほど削り取って乗り越えて克服できるのだと信じます。

Q. そのように考えられるようになった特別なきっかけがありますか?
A. 最近、バン・ウィゴルという画伯の展示に行ってきました。彼の言葉にこんな文句があります。「この道を歩いてきながら、挫折して諦め、再び始めてみたりと何度も繰り返しながらここに至ったのだから、運命であり天職だといえる。」僕はこの言葉を「繰り返すことで自らを教えた」と解釈しました。美術と音楽、演技をなぜ芸術という一つのカテゴリーにまとめたのか気になっていたのですが、この言葉を見て理由が分かった気がします。バン画伯の美術に対する態度と僕が演技する態度がとても似ていると感じました。僕は今もデビュー当初から相変わらず進行形であり、足らないことがあれば何度も繰り返し進行していくことができると信じています。それが今の役目であり、生きていく方法だと思います。



写真提供:MEN Noblesse
出処:MEN Noblesse